第一章 救援の重さ
第1話 1/2/3 野原に生い茂っていた雑草は無残にも踏みにじられ、無数の足跡だけが残っていた。 倒れていない雑草には絡みついた血痕が固まっていて、風が吹いてきても揺らぐことはない。 ここは誇り高いジャイアントに守られてきた大地、そしてこれからも永遠に守っていく大地。 口でこう呟いてみたが、何年か前には心の奥から湧き上がってきた勇気も誇りも今はない。 丘の上に立っていれば広々とした野原が一望出来る。 「悲嘆の平野」と呼ばれるその野原は、モンスター大規模攻撃に対抗したジャイアント部隊が激戦を繰り広げた場所だった。 大勢のジャイアントがここを守るために若い命を落とした。 戦闘終了直後の撤収の際に立てられた簡素な墓碑が高く茂った草の間からその先端を見せ、当時の戦闘の酷さを物語っていた。 あれから30年程月日が流れたが、状況は何も変わっていない。 2時間前までここでは激しい戦闘が繰り広げられていた。 そして今はその悲惨な跡がそのまま目の前に広がっている。 ジャイアントの若い兵士達が野原のあちこちに散らばっている仲間の遺体を回収したり、モンスターの死体を集めて燃やす準備をする姿が見える。 ナトゥーは舌を打ちながら野原を見回した。 今回もこの地は無事に守られたが、モンスターはいつかまた攻撃してくるだろう。 奴らは絶え間なく数を増やし、居住地に入り込み人の命を狙い襲ってくる。 その目的さえも分からない、盲目的なモンスターの攻撃は、ロハン大陸の全種族に永遠に消せない恐怖感さえ与えていた。 まるで永遠に続きそうな戦闘、また戦闘。 物心付いたばかりの年頃、奇怪なモンスターの群れがジャイアントの領地を攻撃してきたという噂を初めて聞いた。 その時は立派な戦士になってジャイアントのために勇敢に戦うことが夢だった。 ナトゥーはその幼い頃の夢通り、今では若いジャイアントの中でも抜群の戦士に成長し、まだ若いにも関わらず部隊長に昇進した。 しかし幼い頃の熱い情熱は失われ、今は習慣的に戦っているだけだった。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の章に戻る ・目次へ戻る |