第一章 救援の重さ

第8話 1/2/3

ナトゥーの質問にクレムは唖然として親友の顔を見上げた。
ナトゥーは真剣な表情だった。彼が冗談を言っているのではないことに気付き、クレムは呆れたような表情を浮かべた。

「フロイオン・アルコンなら現ダークエルフの国王の弟だよ。腹違いの弟だから王位継承権からは遠いといっても、まだ若いのに外交官として頭角を現してきてるようなんだ。」

ナトゥーはその太い眉をひそめた。無口な親友が顔をしかめると、そうとうな圧迫感がある。ナトゥーと同じ程長い間戦場で戦ってきたクレムも、ナトゥーが顔をしかめると若干緊張してしまう。
この重たい空気を追い払おうと、クレムは軽く肩をひそめて見せた。

「まさか、知らなかったのか」

「…」

クレムが軽く肩を叩こうとしたが、ナトゥーは避けてしまった。クレムは置くところを失った自分の手を見下ろしながらつぶやいた。

「エトンまでエスコートする間、フロイオン・アルコンとお前は仲良かったから知っていると思ってたけどな。」

「あいつが追いかけてきてただけだ」

ナトゥーは愛想なく応えた。クレムは肩を竦めて溜息をついた。

「いくら今回の任務が気に入らなかったとしても、自分が護衛する相手が誰なのか知っておくのは当たり前の事だ。最近のお前は無神経すぎる。いつまでも戦場で生きていけると思ってるのか。」

クレムの小言が続き、ナトゥーは両手を上げて見せてその場を去った。
エトンに着いた時、ジャイアント戦士会は礼儀正しく異種族の使者団を迎えた。
使者団のうち、主賓として接されるのは少し偉そうに振舞うダークエルフの女性とフロイオン・アルコンだった。


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る