第一章 救援の重さ
第12話 1/2/3 モンスターに変わってしまった聖騎士から自分を助けたキッシュを覚えているにもかかわらず。 トリアンとキッシュ、エルフやデカンの2人の異種族がじっとしてエドウィンを見つめていた。 エドウィンは何も言い出せなった。 しばらく、3人の間で沈黙が流れた。 洞窟の外から聞いてくる雨の音やたき火の炎に燃えている 木の枝の弾ける音だけが洞窟の中に響いた。 しばらくしてからエドウィンはやっと口を開いた。 彼はトリアンとキッシュを見つめながらこう言った。 「エルフの大神官の勘違いをあなた達はそのまま信じてるんですか。 神が…私達に敵意を抱いていて、全種族をこの大陸から消すためにモンスターを作り出している? そんなあり得ない話しを?」 小さな声で始まったエドウィンの話はだんだん大きな声に変わっていった。 認めたくないという感情の表現。 トリアンが口を開く前にキッシュが言い出した。 深い怒りがこもった荒い息を吐きながら。 「あり得ない?偉大なるドラゴンの末裔デカンがどうやって生まれたかは知ってるか。 デカンはその誕生の時から神への憎悪や怒りを心臓の中に込めて生まれた存在だ。 主神オンがその手で創造した偉大なる存在ドラゴンがどうやって滅亡していったか分かってるのか!」 ドラゴンの末裔という彼の主張が本当かどうかはともかく、炎を吹き出すようなキッシュの怒りにはものすごい威圧感が感じられた。 エドウィンは息を止め、トリアンの肩は震えていた。 キッシュの話しは止まらなかった。 「最高神のオンが消えたわけなんか知らない。 だが、それからロハン大陸の5人の下位神は、全てのドラゴンを攻撃して倒した。 この大陸を守る役割を果たしていたドラゴンは神々によって殺されてしまったのだ。 最後のドラゴン、アルメネスも傷だらけの体で北部のバラン島に行き、デカンを生んでから死んでいった。 それが偉大なるドラゴンの末裔のデカンが生まれた理由で、デカンが神を憎んでいる理由だ!」 キッシュの感情が高まるにつれ、彼の声も大きくなっていった。 キッシュの最後の言葉は金属のぶつかるような高い叫びになって洞窟の中で響いた。 その叫び声はしばらく洞窟の中を、だんだん洞窟の外からの雨音に埋もれて消えていった。 その響きが完全に消えた後にも3人は動きもせずに座っていた。 ・次の節に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |