第一章 救援の重さ

第2話 1/2/3

「私がグラット要塞の総指揮官のヴィクトル・ブレン男爵だ。
今日中に支援兵力が着くことはないと思って寝ていたところだった。
こんな姿でがっかりさせて、申し訳なかった。」

男爵の服装は確かにエドウィンの期待とは違っていた。

なにしろ、ここはデル・ラゴスで最高の防御力を誇る難攻不落のグラット要塞だ。
総司令官もそれに相応しく武装した将軍だろうと思っていたエドウィンの失望を和らげるのは彼の鋭い目つきだけだった。

エドウィンは首都の大神殿から預かった命令書を丁寧に男爵渡し、一歩下がって待機の姿勢を取った。
硬苦しいほどに礼儀正しいこの若い騎士を男爵は興味深い目で眺めた。

“デル・ラゴス王国ロハ教団の聖騎士のエドウィン・バルタソンと、彼が率いる見習い騎士2名をグラット要塞に派遣する。”

命令書は簡潔に書かれていた。男爵は頷きながらエドウィンの方を見た。

「貴君がエドウィンか。貴君のお父様であるバルタソン男爵には何回かお会いしたことがある。
次男が騎士団に入ったと聞いていたが、それが君なわけだ」

「さようでございます、閣下」

「閣下か…」

ヴィクトル男爵が大神殿からの命令書をテーブルの方へゴミを捨てるように投げるのを見て、エドウィンは眉間にしわを寄せた。そして続く男爵の話に驚くしかなかった。

「閣下とかの呼び方はここでは止めよう。
ここは騎士同士がお互いの命を握っている最前線だし、私はこの要塞の全騎士が兄弟のように仲良く過ごしてほしいんだ。
今後は私をヴィクトルと呼んでくれたまえ」


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