第一章 救援の重さ

第6話 1/2/3

エドウィンはこの世界で最も輝かしい存在を目にしていた。これまで一度も見たことはないが、今この瞬間、彼はその存在が何なのかすぐ分かった。地上に存在するものの中でもっとも荘厳たる存在。全ヒューマンの神、ロハだった。いつの間にか彼の体から力が抜け、ゆっくりと跪くような形を取った。

その瞬間、誰一人声をあげないその静まった広間に響いた金属音で彼は気を取り直した。体の力が抜け、握っていた剣を落としてしまったのだ。床に落とした剣に目を向けると、またさっきの声が頭の中に聞こえてきた。

「…ですか、ご無事?私の声が聞こえる?」

「もう手遅れかも知れないよ」

先ほどの独特ななまりの女性の声とともに聞こえてきたのは甲高い声だった。人の声とは思えないほど甲高く、独特なイントネーションで何を言っているのか分かりづらい。あわてているような女性の声に比べて、甲高い声は落ちついている。


すくなくとも、その2人の声はエドウィンが目にしている信じられない場面から彼の目を離れさせることには成功した。エドウィンは緊張で枯れていた喉からやっと声を出した。


「だ、誰だ。誰がしゃべってるんだ」

「私はトリアン・ファベル、高貴なエルフの女王、シルラ・マヨル・レゲノン陛下が治める国ヴィア・マレアの国民で…」

「おいおい、そんな丁寧に自己紹介する時間はないって言ったろ?

少し緊張した感じの女性の声に続き、彼女の声を止める甲高い声。おかしくて笑いが漏れそうだった。甲高い声の人が話を続けた。

「そこにいるヒューマンの坊や、そこの状況を教えてくれないか。彼は現れたのか?」

「…彼?」


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る