第一章 救援の重さ
第7話 1/2/3 2人はグラット要塞から少し離れた丘の上に身を隠していて、要塞の中の状況を知ることはできないでいる。 キッシュは要塞の中の状況を調べるために、トリアンには分からない特殊な能力を使った。遠くに離れていても、目に見えなくても、要塞の中の声が聞ける能力だった。 キッシュだけでなく、トリアンまでその声の持ち主と会話できるようになる能力で、キッシュはその能力をドラゴンの末裔の一部だけが使える特殊な能力だと言った。 が、トリアンはそれがエルフに伝わっていない魔法なのか、何かのトリックなのかは分からなかった。 キッシュの能力で要塞の中の1人と会話をしていたのもつかの間、トリアンにはもう、要塞の中の人の声やその周りの音が聞こえなくなった。 それはキッシュも同じだった。キッシュの大きくて広い耳が2回、ひらひらと動いた。彼は顔をしかめながら言った。 「その坊や、危ないかも」 キッシュはトリアンに答える間も与えず、要塞の方に向かって丘を下っていった。 トリアンは溜息を付きながらその後ろを追った。どうしてこんな仕事が私に任せられたのか。彼女はこれまで何度も頭の中に浮かべた疑問をまた浮かべていた。 ヴィア・マレアの首都ヴェーナは5つの区域に分かれている美しい都市。 そして魔法アカデミーはその5つのうち、一箇所全体を占めるほど重要な場所だ。 長い魔法の歴史の象徴である魔法アカデミーは、海を後ろにそびえたつ王宮の塔ととともに、ヴェーナの誇りだとエルフは思っている。 円形に配置された建物の間の中央にある魔法アカデミー広場は、学問を学ぶ場にふさわしく静かだった。 海の方から吹いてくる風に、広場内の木が揺れ、清涼な音を立てていた。風が吹き、木が揺れ、鳥の鳴き声が聞こえる中でもリマ・ドルシルの声ははっきりと聞こえてきた。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |