第一章 救援の重さ

第9話 1/2/3

ドアの外はおかしなほど暗かった。台風が吹く直前のように空は雲で覆われていた。
そしてかすかな光を背に浴びながら1人立っているものがいる。胸に大きな穴が開き、死んでしまい遺体となった人。
グラット要塞の総司令官ヴィクトルだった。
彼は表情のない顔で剣を握っていた。その目にはロハの姿をした存在と同様、憎悪や殺意が漂っていた・・・

雨の降る音が聞こえてくる。エドウィンは溜息を付きながら体を動かしたが、その瞬間強烈な痛みが感じられた。

彼は喉の奥から漏れそうになる叫びを飲み込みながら、無理やり目を開いた。

最初に目に入ったのは小さなたき火だった。そのたき火の周りにある見慣れない石の壁と天井。目と喉がちくちくと痛んだ。

火をたいてその煙が回りに溜まっているせいだった。
エドウィンから背を向けて座っている人の影が見える。
その人も煙のせいで、口からせきが漏れていた。

「雨のせいで煙が溜まっちゃうね。」

「だから洞窟の中で火は焚かない方がいいって言ったはずだ。火をつけたのは君の方だぞ。」

座っているその人はエドウィンの目が届かないところにいる誰かと会話していた。座っているのはへたくそなロハン語でしゃべる女、見えないもう一人は甲高い声の男。
その二人の声をエドウィンははっきりと覚えていた。


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