第一章 救援の重さ
第3話 1/2/3 「君らをここに呼んだのは、何年経ってもまったく変わっていない戦況報告のためじゃない。特別な指示があるためだ。」 ナトゥーは唇を噛み、クレムの顔は悔しさに歪んだ。 二人の戦士が命をかけて守っている戦場をあまりにも軽んじる発言だった。 二人の顔に不満の表情が浮かんでも、ノイデの冷ややかな表情が変わることはない。 彼は話を続けた。 「ダークエルフ側から使者が来る予定だ。君達に彼らの護衛を任せたいんだ。」 「護衛…ですか」 ナトゥーは怒りを押し込めた声で聞いた。 使者の護衛のために、部隊長の自分やクレムを首都まで呼ぶのはいくらなんでもおかしい。 何かの過ちで謹慎措置が下りたのでもない。 おかしいところはそれだけではなかった。 「その使者は私達が護衛に当たるほど大事な客ですか」 こんどはクレムが聞いた。 ジャイアントにとってダークエルフは嬉しい客ではない。 単純でストレートな性格のジャイアントにとって、形を重視し、本音を出さないのが特徴のダークエルフは決して理解できない存在だった。 しかも彼らはジャイアントには分かることのできない力、魔法を使う種族。 そうした複雑な不快感がクレムの短い質問に込まれていた。 ノイデはもう一度2人の戦士を見つめ、頷いた。 「君達の活躍ぶりはすでにここエトンまで知られているから、君達はもうすぐ戦士会の一員になるだろう。 だから、知らせておく必要があると思ったんだ。 偉大なる戦士で、岩の魂を持つ我々の国王、レプトラバ陛下はダークエルフと手を組もうとお考えになられている。」 2人の若い戦士は驚いた顔のまま、何も言えず口ごもってしまった。 彼らを見つめていた老いた戦士の口元にほんの一瞬かすかな微笑が浮かび、すぐ消えた。 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |