第一章 救援の重さ
第4話 1/2/3 男爵の遺体には不審なところがたくさんあった。だが、グラット要塞に派遣されて1日も経っていない自分が 今回の事件の調査で表に立つ事は出来ないだろう。 彼は目を開けて神殿の外の方を眺めた。集めていた兵士達が3、4人ずつ群がりざわめいていた。 何かが…おかしい。 騒いでいる兵士達を落ち着かせて整列させ、この事件の後始末をすべき騎士達の姿が見えない。 それ以前に、普段ならこの時間になると朝の業務を指示し、訓練の準備で忙しいはずの騎士達が 1人も姿を見せない。 しかも、今朝はうるさい鐘の音や叫び声で、普段よりうるさくて騒がしい朝だったはずだ。 …なのに騎士は1人も見当たらない。 緊張と不安でエドウィンの顔が強張ってきた。 そういえば騎士達を呼ぶために詰め所へ向かわせたハウトもまだ戻ってこない。 エドウィン気付いた、この要塞で何かが起きている・・・ 兵士達の方を見ると、彼らも何かがおかしいと感じ取り、騒いでいるようだった。 やがて兵士達のざわめきもだんだんと小さくなり、彼らは騎士団の詰め所の様子を伺っているようだ。 エドウィンは手に提げていた剣を握りなおした。 皆が眠っていた夜、騎士団の詰め所をモンスターが襲ったのか。 この要塞にいる騎士はもう自分だけかもしれない、という不安が頭を横切った。 …自分の目で確かめるしかない。 もう夜は明け、辺りを覆い隠すような闇も消えて太陽が昇っている。 雲1つ浮かんでいない青空に鎮座する太陽からまぶしい日差しが溢れているのにもかかわらず、 不安は消えない。 エドウィンが閉ざされた騎士団の詰め所のドアに手を当てようとした瞬間、どこからか声が聞こえた。 その女性の声はヒューマンの言葉を喋りなれていないように、どことなくぎこちない。 また、その声はエドウィンの耳ではなく、彼の頭の中に入り込んできたようだった。 −大丈夫?私の声、聞こえていますか?− ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |