狂気を運ぶ暴雨

第1話 1/2

激しい雨で空は夜のように暗くなっていた。
雨に濡れた窓ガラスの外の風景は、まるで空全体が泣いているようだった。
バルタソン男爵はタバコを吸いながら、昔のことを思い出していた。

‘そうだ…その日も今日のように激しい雨が降っていた…’

夕日が沈み、だんだん暗くなっているのに、ポニーに乗って出かけたエドウィンがまだ帰ってこなかった。
9歳の息子が暗くなっても帰る様子がなく、バルタソン婦人はおどおどしていた。
妻には男の子だから、たまにはこんなこともあるだろうと、落ち着くように言ったが、男爵自信もだんだん不安を覚えはじめていた。
雨が降り出してから、バルタソン男爵は執事と一緒にエドウィンを探しに出た。
しかし、9歳の子がポニーに乗って行ける場所は全て探してみたが、エドウィンの姿はなかった。
ふと見上げると、頂上の方向から微かな光が目に入った。
人が住んでいるなら、もしかしてエドウィンと出会った可能性があるのではないかと思い、その光の方へと向かい始めた。
光が見えたところは、古くボロボロになった山小屋だった。
そして、小屋の前に、エドウィンのポニーがいた。
バルタソン男爵は、ノックもせず家の中へ飛び込むように入った。
ペチカの前には、一人の女性が立って火を起こしており、ベッドの上には二人の子供がいた。
一人がエドウィンだった。

「エドウィン!」

「お坊ちゃま!」

男爵と執事がベッドに向かって走りながら名前を呼んだ。
男爵は寝ている息子を起こそうとしたが、彼は目を閉じたまま、ぴくりともしなかった。
男爵は女性に怒鳴った。

「俺の息子に何をやらかしたのか!」


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