狂気を運ぶ暴雨
第10話 1/2/3 縛られたまま連合軍が持ってきた鉄格子の車に閉じ込められ、エルス港まで運ばれた。 カエールは臨時監獄に送られた。 カエールの監獄を警備する兵士は、ヴェーナまで連れて行く兵士が着くまで臨時監獄で過ごすと説明してくれた。 エルス港の臨時監獄での初日に、エルス港連合軍の総司令官という人物が監獄を視察していた。 カエールの監獄を警備している兵士達は、総司令官が帰ってからカエールに話しかけた。 「先ほどここを視察した方が連合軍の総司令官で、デル・ラゴスで満場一致で選ばれた方だ。 ゼラード・ダートン子爵はみんなから尊敬されている。本当に素晴らしい方だ」 ゼラード…ダートン? 「おい、総司令官の名前がどうした?」 「ゼラード・ダートン子爵だ。何だ?知り合いか?」 「あ…いや。何でもない」 カエールの心臓が激しく動き始めた。 父親とこのように出会えるとは思いもしなかった。 いつも父親のことを忘れようとしていたから、彼を見るカエールの心は複雑だった。 総司令官のゼラード・ダートンは毎日のように監獄に立ち寄り、兵士達を励ました。 彼が来るとカエールは監獄の隅の陰に体を隠したまま、彼の姿を観察した。 紅葉のような茶色の髪の毛に、茶色の瞳。ゼラード・ダートン子爵はいつも低くて暖かい声で兵士達に声をかけていた。誰が聞いているか気にせずにしゃべってくれる兵士のお陰でいろいろな情報を得た。 ダートン子爵が若い頃、女性に人気が高かったのにもかかわらず、いまだに独身だとか 弓の腕が優れているとか… 忘れようとしていた父親の姿を見ながらカエールは自分も知らず彼を待つようになった。 ある日、いつものように地下監獄を廻っていたゼラード・ダートンがカエールの監獄の前で足を止めた。 彼は監獄の中を除き見て、警備している兵士に聞いた。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |