狂気を運ぶ暴雨

第5話 1/2

「そんな!」

アリエが真っ青になって叫びだした。

「きっと何かの間違いだよ、セルフ!エルス港連合軍が全軍動き出したなんて!」

「アリエ、落ち着け」

カエールがアリエを抱きしめて宥める。

「私も見た。とんだ予想違いだった。あいつらはこのチャンスを逃さずカイノンを完全に壊滅させるつもりだ。
今彼らと戦うのはタマゴを以って石を撃つのと同じさ」

アリエはカエールに抱きついたまますすり泣きはじめる。そんな二人を見つめていたバナビーがセルフに聞いた。

「要求は何だったのですか?」

セルフは戸惑いがちにカエールとアリエを見やるだけで、何も言わない。

「まさか…」

バナビーは信じられないという表情でカエールの方を見つめた。カエールはゆっくりと頷く。
ハーフエルフに協力するというジャイアントの手紙が届いた次の夜、エルス港連合軍はその姿を現した。
朝になって、ハーフエルフたちはカイノンを取り囲んでいる連合軍の姿を見ることができた。
想像を超える兵士の数を見て人々は絶句した。
彼らの要求は、ただひとつだけだった。
アルマナ荘園の領主であるロザリオ・ベニチとその守護兵を殺したカエールに相応の罪を問うこと。
彼らが許した時間はただ一日だけだった。
一日を、人ひとりの運命を決めるに十分な時間とは言えない。

「アリエと二人だけで、お話をさせてください。」


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