狂気を運ぶ暴雨
第6話 1/2/3 晴天を思わせる壁に囲まれた部屋は豪華で、清雅な香りに満ちていた。 部屋の中の家具は純白の珊瑚で作られていて、海の中にいるような錯覚さえ起こす。 雲のようにふわふわしているベッドに横たわって、キッシュは天井を見上げた。 最後の試練で目標地点に着いてハエムと苦笑を漏らしていた時、キッシュが次の国王の後継者に決められたと、バハドゥルが叫ぶ声が聞こえた。 ハエムとキッシュは唖然とした。それはその時まで笑んでいたカルバラ大長老とドビアンも同様だった。 その場にいた誰もが自分の耳を疑った。 何か間違いがあるのではないかとカルバラ大長老は言ったが、バハドゥルは、国王陛下は間違いなくキッシュを次の後継者に決められたと答え、 キッシュに王宮へ向かうようにと伝えた。 うろたえる人たちを後にしたキッシュはバハドゥルと一緒に王宮に入り、国王陛下に謁見した。 国王は微笑みながら、最後の試練に隠していた意味を説明した。 頭では理解できたが、キッシュは依然として自分が次の国王になるという事実を信じることができなかった。 目の前で倒れた息も絶え絶えの少女を抱えて医術師を尋ねながらも、キッシュは結局自分は負けたのだと思っていた。 だが驚くことにそれは国王の隠密な試しで、その行動の為に自分が最終的な勝利者になったのだ。 「やはり国王は普通の人とは着目する所が違うのかも…」 出発点で走り始めた時、ドビアンとキッシュは互角だった。 誰かが足を踏み外して転ばない限り、二人は同時に決勝点に着くはずだった。 だがしばらく走っていたら、視界の向こうに何かが見え始めた。 十分に近づいてやっとそれが道端に倒れている子供だとわかった。 キッシュは足を止めて子供の容態を確認した。気を失っている子供の全身に赤い斑点が見えた。 火がついたような高熱を発して、息が上がっている姿はどう見ても深刻な容態だった。 だがドビアンは子供が見えなかったのか、すれ違いそのまま走って行った。 「ドビアン!子供が倒れている!」 ドビアンはちらっと振り向いて、氷のように冷たい目つきで短く言った。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |