狂気を運ぶ暴雨

第10話 1/2/3

「彼はハーフエルフか?」

「はい、そうです。カイノンでエルフを5名殺害したそうです。」

「そうか」

うなずいていたゼラード・ダートン子爵は少し迷う様子だったが、警備兵に自分を中に入らせるように命令した。
カエールの胸の鼓動が激しくなった。
やがてダートン子爵が中に入り、入口近くにある小さい椅子に腰を下ろした。
闇中に座っているカエールに声をかけた。

「名前は何だ?」

「か…カザン」

「カザン…独特な名前だな」

二人の間には奇妙な沈黙が漂った。沈黙を破ったのはゼラード・ダートンの声だった。

「実は俺にはハーフエルフの子供が一人いるんだ。もしかして二人かも知れない。
最後に見たのが生まれる前だったから、双子だったら、二人かも…
とにかく俺は若い頃、美しいエルフの女性と恋に落ちた。子供も出来た…
俺には幸せな家庭を作る自身があったが、彼女はそうではなかったようだ…
ある日突然姿を消してしまった。別れの言葉すらなく…
彼女を探してあちこち廻ったが、彼女を探し出すことは出来なかった。今でも会いたい…
もしかして君、ダートンという名字のハーフエルフと会ったことはないか?」

カエールは少し迷ったが、会ったことがあると答えた。
ゼラード・ダートンは驚いた様子で興奮した声で聞いた。

「男か、女か?名前は?」

「男性で、名前はカエール・ダートンでした」


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