狂気を運ぶ暴雨

第8話 1/2/3

セントールウォリアーは魚をもう一匹食べながらしゃべった。
ナトゥーは警戒を解けず、両手に剣を握ったまま動かなかった。

「おい…攻撃しないから、そんなに警戒しなくて大丈夫だ。
まあ…いきなり信じてくれと言ってもしょうがないか」

彼は背負っていた弓と矢筒を解けてナトゥーの前に投げながら話した。

「さあ、そうすると安心だろう?早く来ないと俺が全部食ってしまうぞ」

ナトゥーは手が届くところに剣を差し込み、ライノの背中に縛っておいた鎧をまとった。
ナトゥーは焚き火に向かい、セントールウォリアーの向かい側に座った。
睨み続けているナトゥーをみながらセントールウォリアーは焼いていた魚を渡した。

「そんな怖い目で睨まないでくれよ。食べる為に獲ったんだろう?
焚き火を起こしたのは俺なんだぞ。手数料で何匹か食べていると思ってくれないかな」

「燻製にして旅行の食糧に使うつもりだったのだが。ずうずうしいな」

「ははは。よく言われる言葉だ。まだたくさん残っているから、俺が燻製してやろう。
こう見えても料理には自信があるぞ。
あ、ちなみに俺はイジケだ」

料理に自信があるというセントールウォリアーの表情にナトゥーはあっけなく笑い出してしまった。

「そうそう。笑うのだ。最近は笑うことがあまりにもないから、努力するべきだぞ」

「無理やり笑うってことか?」

「無理してでも笑わないと笑う方法すら忘れてしまうんだ。
俺の仲間はいつの間にか笑う方法すら失ってしまった。
そうか…下位神たちから、他の種族を攻撃するように命令されてからだった…」

「何?」

青い葉っぱを焚き火に入れながらイジケが話した。

「おかしいと思ったことはないか?昔お前らの先祖たちは俺らと一緒に狩りをしていた。
しかし、今はどうだ?出会った瞬間からお互いを攻撃しているだろう?
全ては下位神たちに命令、いや、脅かされているためだ」


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