狂気を運ぶ暴雨

第3話 1/2/3

ジャドルは自分の人生の中には恋というものは存在しないと思っていた。
人々は彼女が国王の愛人と言っているが、彼女自身は一度も国王に恋を感じたことはない。
ジャドルがカノス・リオナンのそばにいるのは、彼が国王であるからだ。
絶対権力の国王の愛人になることは、誰より強力な権力の持ち主になることを意味する。

‘カノスも私を愛しているわけではない。彼が誰かと恋に落ちることは想像できない。
彼が私の言うことを聞いてくれるのも、ただ私が彼を楽しませているからだ。
それ以上でも以下でもない’

彼女が部屋に入ると、カノス・リオナンは白い猫をなでていた。
ジャドルは、赤いシルク製の扇子を持ち、ゆっくりと彼に近づいた。
彼女はドレスを軽く握り広げながら、優雅に挨拶をした。

「お呼びでしたか、陛下」

カノス・リオナンは無表情のまま、彼女を手招いた。
ジャドルも静かに彼のそばに座った。
カノスは何かに怒っているように彼女を強く抱きしめ、キスをした。

「陛下…」

「静かに。今あまり気が気ではない」

ジャドルはカノスが好きなようにするように静かに身を任せた。
今のカノスに逆らうと彼の機嫌がもっと悪くなるだけ。

「先ほど王妃の部屋に寄った」

彼が静かに話し始めた。

「子供が出来たそうだ…」


・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る