運命の分かれ道

第7話 1/2

ナトゥーの頭に不吉な予感が走った。彼女は迷っている様子でようやく口を開いた。

「ナニさんの体は弱くなっています。心の準備をした方がいいと思います」

「母親が…生きる時間が余り残っていないとのことですか…?」

彼女は静かに頷いた。

「元気ではない体で長期旅行をしたのが原因ではないかと思います」

ナトゥーは何も言わず部屋の中の様子を見た。遠くから母親の姿を見つけたナトゥーの目が潤った。
髪の毛が真っ白になった母親はベッドの上に座って、窓の外から入ってくる日差しを楽しんでいる様子だった。

「母親に残っている時間を見守ってください」

彼女はナトゥーの話に静かに頷いてから部屋の中に入った。
ナトゥーも何もしゃべらずに母親がいるベッドに近づいた。
当分そのまま目を閉じていたナニは人気を感じたように目を開いた。

「ナトゥー…」

「母上…」

ナトゥーの母親は目が潤って息子の方を抱きしめた。

「ナトゥー…ナトゥー…生きていた!私の息子が生きていたんだ…」

「母上を残して死ぬわけにはいきません…」

「ナトゥー…」

ナトゥーの母親はナトゥーを抱いたまま、むせび泣きをした。
ナトゥーも母親を強く抱いて泣いてしまった。

体が弱くなっている母親をつれてドラットに戻ることは無理だったので、ナトゥーは心の準備をしながら、母親と一緒に修道院に泊まった。
ある日ナニは寝る前にナトゥーの頭をなでながら話しをした。

「ナトゥー、誰かを憎み、攻撃するより、心を開くようにしてみて。
心を開くことがもっと豊かな生活が出来るようにしてくれるの」

「いきなり…なんで…」

「あなたはジャイアントの戦士だね。戦いばかりしているうちに自分も知らないうちに人を憎んでしまうの。
私はいつもこれを彼方に伝えたかった。今話さないと後では話ができないかも…」

「母上も知っているでしょう?俺は頭が悪いから、一回では覚えられません。明日もう一回話してください」

母親は優しく微笑んでくれて横になった。
翌日の朝、ナトゥーが来たら、微笑みを浮かべたまま、寝ていた。
亡くなっていたのだ。
ナトゥーは静かに涙を流した。



・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る