第二章 神を失った世界

第3話 1/2/3

荷物を背負って運ぶ手伝いの背中が赤く染められていった。
度重なる旅に慣れている手伝い達は着々と今夜のキャンプを組み立てている。
今度の旅で、今日が最後のキャンプだ。
たぶん明日はジャイアントの宿で泊まることができるだろう。

ダークエルフの首都モントからジャイアントのエトンまで何回も旅をしたのに、フロイオン・アルコンにはキャンプはまだ慣れることができなかった。
優雅で贅沢な生活を大事にするダークエルフの貴族社会で生まれ、庶子ではあるが、国王の息子として育ったのが彼だ。

手伝い達の熟練した腕前で完成されていくキャンプを見つめながらフロンは馬から降りた。

「いい天気でよかったね」

ロビナが笑顔で話しかけてきた。
フロンはうなずいてその話しに同意を表し、その場を去ろうとしたが、ダークエルフの女性、ロビナはそれをまったく気にせずに話しを続けた。

「前回は冬だったから寒さに耐えられなかったわ。
ジャイアントはそんな寒さをどうやって耐えているだろうね」

「前回の訪問の際にもけっこう楽しそうでしたけど」

疲れたせいか、温厚な声ではなかった。
フロンはそれに気付き、自分に呆れていた。
ロビナは気にしないように、明るく笑った。
中年に近い年齢なのに、ロビナの笑いはまるで少女の笑いのよう、明るくて爽やかだった。

「ああ、もちろん。旅が好きなの。旅中の苦しいことも後で思い出すと楽しい思い出になるもの」

手伝いが来てキャンプが完成したことを伝えた。
二人のダークエルフはお互いに向かって会釈をし、それぞれのキャンプに向かった。
ロビナは勢力家で生まれ、財産家の老人と政略結婚した。
夫の死後、彼女は王室議会の代表を務める父親に頼んで外交官の資格を得た。
夫の財産を勝手に使いまくってる、家門の政治的な性向に従わない裏切り者、落ち着けないお転婆など、彼女の悪い噂は後を絶たなかった。


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