第二章 神を失った世界
第4話 1/2/3 思いもよらない襲撃で一瞬ライは慌てたが、すぐ冷静さを取り戻した。 自分の後に立って右の肩や腕を引っ張っている者が、大柄の人物でも、ものすごい力の持ち主でもないことにすぐ気付いたからだ。 鍛えられていない体の小柄の女だった。 女は必死でライを止めていた。目的はライの右手をそれ以上動かないようにすること、ライが標的の命を奪わないようにすること。 しかし、このままやられているだけのライではない。体をひねって相手の手の握りを緩め、その際に右の手首を回して剣の刃を後の方に振るった。 特に力を入れる必要はなかった。 尖った刃が人の体を切る、その慣れた感触が剣から手に伝わってきた。 女の手が、ライの腕が痛くなるほど握り締めた。 そしてゆっくりその手から力が抜けていった。 ライは女を振り切って自分が狙っていた人物の方を見た。 もう遅かった。 ライは舌打ちを打った。 標的は眠っていなかったようだ。 彼は起き上がってライの方にスタッフを差し出して、防御体勢を取っている。 しかも片手には魔法の気運を集めている。 ライは標的に向かって襲い掛かろうとしたが、すぐ横の方に体を避けた。 肩の上をぞっとさせる魔法の気運が通った。相手は魔法師なのに油断しすぎていた。 しかし今なら彼を倒せるチャンスがつかめる。 いくら魔法師といってもまた魔法を使うには時間が必要だろうから。 ライは体を起こそうとしたがそうはいかなかった。 体を急に伏せたとき、足首を痛めたようだ。 苦しそうな短い声を出し、やっと起き上がったとき、標的の男はいなくなっていた。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |