第二章 神を失った世界
第1話 1/2/3 報告を受けたリマ・ドルシルは最後の希望さえ失った人のような表情に変わった。 それから彼女は1度も笑顔を見せなかった。 確か、神官としても預言者としてもリマにも認められない真実だったのだろう。 いろいろ思い出しているうちに、いつの間にかトリアンは神殿に着いていた。 トリアンの記憶の中のリマの表情と同じ表情をしたリマ・ドルシルの暗い顔が目に入った。 「お久しぶりです、大神官」 「お久しぶりですね、トリアン」 大神官は軽く会釈をしてトリアンの挨拶に応えた。 彼女は神殿の祭壇の方を眺めた。 祭壇の上には黒のリボンで結ばれた何輪かの花が置いてあった。 トリアンが持ってきた花束より素朴なものだった。 「なんか、そのことを思い出して…」 トリアンの視線も祭壇の上にとどまっていることに気付き、リマ・ドルシルは言い訳のようなことを言った。 トリアンはうつむいてしまった。 トリアンがデカン族のキッシュと共にデル・ラゴスに行ったように、同じ任務を遂行していたエルフが2人いた。 リマ・ドルシルの頼みで1人はハーフリングの国リマへ、もう一人はダークエルフの国イグニスに派遣された。 彼らもトリアン同様、ロハン大陸の一部が占領される現場を目撃したのだ。 リマに派遣されていたエルフは無事戻ってきたが、イグニスに派遣されたエルフはモンスターに襲われ、大怪我をしたまま戻ってきた。 そして何日か過ぎて息を引き取った。 リマ・ドルシルが用意した花束がその人のためだった。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |