第二章 神を失った世界

第5話 1/2/3

「何か証拠などございましたか、クレム様の命令で一応ここを調べたのですが、襲った奴らの正体が分かる証拠は見つかりませんでした」

後から声が聞こえていて振り向いたらクレムの部下の1人だった。
捜索隊の1つのチームのリーダーだった。
その不満そうな声はたぶん、自分が警備を担当している地域でこんなことが起きてしまったこと、正体が分からない新しい敵への恐怖、ナトゥーが急に捜索隊に合流したことへの不満などから来るだろう。
ナトゥーは応えようとせずに、ダークエルフの女性に首の傷をじっくり見た。

「深さを見ると、短い刃の剣かもしれんが、切られた傷の形がちょっとおかしいな」

彼は起き上がってテントから出た。
太陽は西の方で暮れかけていた。
夜になるとフロイオン・アルコンを捜索してから2日も経つことになる。
…彼を探すことができるだろうか。

『先に動き出す者が勝つのです。
そして私達は先に動くつもりです。
誰よりも先に…ただ、勝利のために』

ナトゥーはフロンがこう言っていたことを思い出した。
そう言ったあなたより先に動いた者は一体誰だ。
誰があなた達を襲ったんだ?
答えを探せることはできなく、ナトゥーはいつものように表情をしかめるだけだった。


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