第三章 因果の輪
第1話 1/2/3 地上の誰も近寄ることのできない蒼空の都市アルピア。 ここは下位神の住む世界で、徐々に廃墟と変わっていくロハン大陸の ずさんな風景とは裏腹に神の祝福で緑が茂る、美しい都市だった。 その中心には、カタツムリの柄の形をした純白のラコンが立ち、 その周辺には森や湖がまるで青い海のように広がっていた。 しかし、生き物としての気配が感じられる存在は何1つ無い。 知恵の神ロハは窓際に立って、窓から見える地上の風景を冷たい視線で見下していた。 ロハは5人の下位神のリーダーで一番上の神、もっとも冷静で理性的な神だった。 彼は黒の深い瞳は千里の先も見られ、生きているなら、どの生き物の精神でも支配することができる。 しかし彼が唯一どうにもできない存在は主神オンの破片を持っている者。 それを考えているロハは美しい風景を眺めていても、晴れた気分にはならない。 そのとき、シルバの風が彼の肩越しで吹いてき、彼の髪の毛を乱した。 「フロックスを追い出したって本当?」 シルバが後から現れた。 彼女の野生的な灰色の瞳は好奇心で光っている。ロハは溜息を付いた。 「そのバカの話しはよせ」 ロハの冷たい言い方にシルバは声を出して笑ってしまった。 「一体うちの末っ子がどんないたずらをしてロハを怒らせたのかしら?」 シルバの意地の悪い質問にロハは顔をしかめた。 シルバは5人の下位神のうち、4番目で、明るくて活発な性格だが、 感情の起伏が激しく、わがままなところがある。 今もフロックスへの心配よりは、この状況を楽しんでいるだけだった。 「お父様への疑いや俺への反発」 ロハは物を切り取るような答え方にシルバは驚いた様子だったが、 すぐうなずくように自分の髪の毛を指で巻いた。 「まあ、いつかはフロックスがあんたに反発するだろうとは思ってたわ、 その子はあなたにやきもちを妬いてるから」 「余計なこと言うな!」 ロハはシルバを恐ろしい目で凝視した。 「あら、怒らせちゃった?」 シルバは彼の怒った顔を後に、大声ではしゃぎながら風と共に消えてしまった。 シルバがいなくなって、ロハはまた溜息をついた。 彼女のせいで思い出したくないフロックスとの口喧嘩のことを思い出してしまったのだ。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の章に戻る ・目次へ戻る |