第三章 因果の輪
第4話 1/2/3/4 「ここは…?」 「バロウの森周辺にある湖の近くだよ。倒れたこと、覚えてる?」 フロイオンは軽くうなずいた。 「あ、でも、よかった。出血がひどくて心配してたよ」 少年は安心したとの意味の溜息をついてにっこり笑った。 後に立っていた仲間らも何か話していたが、何を話しているかまでは分からない。 「僕はエミル。あなたは?」 フロイオンは名前じゃなく、愛称を教えた。 「フロン」 エミルは自分のカバンから水筒や皮の袋を取り出した。 「ビスケットとパンしかないけど食べておいた方がいいよ、お水から飲んで」 フロイオンは起き上がってエミルからの食べ物を少しずつ飲み込んだ。 何日も食べてなかったため、パンは喉に詰まってしまう。 フロイオンが食べている間、エミルは自分の仲間を紹介してくれた。 「こっちはマリ、テミ、ジンシャ、ネティ…皆ラウケ神団の信者で、今は修行中なんだ」 皆エミルと同じ年ぐらいの少年の顔をしていた。 「ラウケ神団?」 フロイオンは水を飲んでから聞いた。 もうすっかり朝になって、木の枝の隙間からの日差しが眩しかった。 これ以上ここに長くいるのは危ない、でももう少し休みたい気持ちも切実だった。 「ラウケ神団はヘルラックの預言書を教理とし、エリシャ様が率いる宗教集団だよ。エリシャ様はヘルラックの弟子の弟子で、この大陸の未来について預言をする方。僕達はその方の指示でこの大陸に真実を知らせることを任せられているんだ。正義の味方っていうか!」 フロイオンはエミルの話しを聞いた。 「真実って?」 「あ…」 エミルは話しを途中でやめ、暗い顔をした。 回りにいた他の子達の顔も暗くなった。 フロイオンはすぐ謝った。 「あ、言いたくないことなら言わなくてもいいよ」 フロイオンのこの言葉にエミルは慌てたような仕草を見せた。 「違う、違うよ。ただそれを話すたびにだんだんそれが現実になると思っちゃって、気が重くなっただけだよ」 エミルは少し間をおいてやがて話しを続けた。 「たぶんフロンは僕の話しを信じないと思うけど、ロハン大陸は今滅亡の危機に迫られているの。ヘルラックは大変昔からそれを預言したしね。 僕達はその真実をこの大陸の皆に知らせて、人々が神に許してもらえることを望んでいるよ。」 「おかしいな、世界が滅亡するのは人間のせいじゃないのに、なぜ人間が神に許しを求めなければならないのか」 フロイオンにはそれが理解できなかった。神はただの神だ。 彼らに許しを求めるのではなく、救うことを祈るべきじゃないか。エミルはフロイオンの考えたことを読んだらしく、元気のない小さな声で答えた。 「それは世界を滅亡させようとするのが神だからなんだ」 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |