第三章 因果の輪

第3話 1/2/3

ナトゥーの冷たい言葉にも、バタンは毅然たる態度は変わらなかった。

「おやおや…ナトゥー様は私よりも自分の事を分かってないようだ。
あなたならお金も権力も簡単に手に入れられる。なのに、全く興味がないなんて…」

ナトゥーは腹を探るような話しぶりと、分かっているのに分からないふりをする図々しいバタンの態度に、どんどん不快になっていった。
自分への彼のテストはもう始まったのだ。

「知っているなら、これ以上私に政治的な話はしないで下さい。
今回の事は国王の命令なので従いますが、それだけです。
他の政治的な問題に関しては一切関わりたくありません。
俺は戦士であって、政治家ではありません。」

ナトゥーの言葉にバタンはにっこりと笑った。
その微笑には鋭さが宿っていた。

「ナトゥー様。あなたはあなたが願わなくてもいずれはこの争いに巻き込まれるでしょう。
ノイデ様までも欲しがる人物だからね、あなたは。
ですので、いつかはどちらかを選ぶしかありません。
我々がダークエルフと友達になれないように…」

ナトゥーは彼の言葉の中に毒があるような感じがした。
彼が言葉を出した瞬間から、彼の運命が踊らされるような、言葉に考えが縛られるような感じだった。
バタンはナトゥーが顔をしかめたまま、沈黙しているのをみて、マントの帽子をかぶった。

「あともう一つ。
私の情報源によると、フロイオン・アルコン卿は国境を越えて、ハーフリングの領域に入ったようです。
ここからだとまだ追いつける事ができるでしょう。
しかし、まだ誰かに追われている状況で、命が危ないです。
彼が死んでしまったら、我々にとっても大変なので、早速出発して下さい。」

「承知。」

ナトゥーが短く返事した。

「それではナトゥー様、次回はその心に剣がありますように。」

バタンは小さく笑い、バラックを出た。
ナトゥーはバラックの出口から一瞬入り込んだ日差しに目をひそめた。
まるで暗闇に囲まれていたように、彼の心にも闇が染みこむようだった。 

「あんたなら俺に答えをくれるだろうか。」

ナトゥーはフロンを思い出し、苦笑いした。


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