第三章 因果の輪

第4話 1/2/3/4

エミルの話しにフロイオンは信じられないといわんばかりの顔をした。
いくらモンスターが暴れ、大陸が混乱に陥ったって、神がこの世界を破壊させようとするなんて根拠のない憶測じゃないか。
フロイオンはラウケ神団って世の中が混乱な時に登場する宗教集団だと確信した。
しかし、暗くなっているエミルやその仲間達を見ると、そんな話しは到底できなかった。

「やっぱり信じないんだね」
エミルは元気ない笑いを浮かべた。

「うん、でも簡単に信じられることではない」

フロイオンは自分を助けた子供達の気分を悪くしたくはなかった。

「謝ることではないよ。それよりフロンはどうしてここにいるの?こんな怪我までして。
他の仲間は?」

エミルは明るい言い方で色んな事を聞いてきた。
フロイオンはもうかなり時間が流れたことに気付いた。
これ以上ここにいたら、またアサシンの追っ手に見つかるかもしれない。
フロイオンはエミルが包帯を巻いた自分の肩を動かし、動くことはできることを確認した。
そして起き上がった。
ここにずっといると、この子供たちまで危険な目にあうかもしれない。

「エミル、助けてくれてありがとう。しかし俺が答えて上げられる事はない。俺はもういかなければならないんだ」

フロイオンは自分の横に置いてあったスタッフを握り、方向を把握するために空を見上げた。

「まだ傷がひどいよ、一体どこに行くつもり?」

びっくりしたエミルは聞いた。

「家…っていうか」

フロイオンはイグニスの首都モントを浮かべて苦笑いをした。そこが自分の家なのかどうか、今は彼にもその確信はない。

「じゃ、これを持っていって」

エミルは水筒や食べ物の入った袋をフロイオンに渡した。
フロイオンは心のどっかから切なさを感じた。
母親が死んだあと、こんなに優しく世話をしてもらったことはない。
彼はエミルに感謝の言葉を伝えたかったが、何って言えばいいのか言葉が浮かばない。
ありがとう。
この一言では足りなすぎる。


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