第三章 因果の輪

第6話 1/2/3

よく見たら光の一番近くにいるのは2人のダンだった。
髪の毛の短い男で、右の胸元に包帯が巻かれていた。
もう一人は長い黒髪の女の人。
その女はゆっくりと光の中にいるダークエルフに近づいていた。

エドウィンはやっと、そのダンの女がダークエルフを殺そうとしていることに気付いた。
エドウィンも剣を握ったままそのダークエルフに近づいた。

しかし光はダークエルフの保護するように、その中へ入り込もうとする全てを拒否していた。
エドウィンは深呼吸をして光の膜を体で押しながら中へ入った。抵抗感が感じられる。
彼は目をつぶってゆっくりと入った。

光の中へ完全に入ったと思った瞬間、目を開けたらダークエルフの後姿、そしてそのダークエルフを襲うダンの長い髪の女が眼に入った。

「やめろォーーー!!」

エドウィンは握っていた剣を取り出し、青く尖った刃がダークエルフの首に触れる直前にやっと止めた。

金属のぶつかる音が聞こえたと同時に光が消えた。
エドウィンが見たのはダークエルフの首を間に、十字架の形に重なっている2本の剣。

「なんてことをするの?!」

タスカーがふらふらしているダークエルフを支えながらダンに叫んだ。

「かまうな、そいつを渡してから去れ!」

少し離れたところから誰かが答えた。
まるで凍りつくような冷たい声だった。
エドウィンは剣を握った手の力を入れたまま声が聞こえた方向を見た。

長い髪を2本の髪飾りで固定していたが、服装が乱れていたことから走ってきたようだった。

しかしその傲慢な態度や言い方はリーダーであるということが十分にわかった。
エドウィンは剣を握っていた手にもっと力を入れて、ダンの女の剣を振り切った。
その間にタスカーは素早くダークエルフを後へ引っ張った。

「そうはいかない。
異種族だとしても命は大事なもんだ。
お前らは何者だ!なぜこの人を殺そうとする?!」

エドウィンの叫びのような質問には誰一人も答えない。

「こいつらは暗殺を専門にやってる奴らだよ、アサシンだわ。
自分の口で正体を明かすはずがない」

タスカーが気を失ったダークエルフを起こしながら、エドウィンに呟いた。

「どうせすぐ死ぬ奴が俺らの正体を知ってどうする!」

ダンのリーダーは持っていた剣でエドウィンを指しながら、もっと冷たい声で答えた。

「もう一度聞こう。
そいつを渡して去れ。
そうしないとそいつと一緒に地獄行きにしてやる」

「俺は聖騎士エドウィン・バルタソンだ。
この名に恥をかかせるような真似は絶対しないぞ」

「全員殺せー!」

リーダーの声が空中に響いた。


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