第四章 隠された真実
第10話 1/2/3/4/5/6 「お前のせいだ!」 セリノンの声が森に響く。 ライはうつむいたまま何も言わない。 もう一人の生き残った仲間であるクニスは、顔に何の感情も表さずにライを見つめている。 「もともと自分が担当したターゲットをきれいに始末したら、こんなことは無かったはずだ! お前のせいで仲間を二人も亡くしたのだ!」 矢のついた首をつかんで倒れたディタの姿が目に浮かぶ。 パルタルカで唯一、自分をダンとして認めてくれた友。 バルタソン男爵によって魔女の烙印を押された母の火刑が行われたその夜から、ライは森に逃げ込んで放浪を始めた。 森にはモンスターがうろついていて危険だったが、ライには自分の母を殺した、怒った町の人たちがもっと怖かった。 しかし、幼い少女が一人で森の中で暮らすには限界がある。 ある日、彼女は町の人たちに見つからないよう、密かに自分の家に戻ってきた。 飢えたお腹を満たすためだった。 台所にはからから乾いたパンと腐ってしまったリンゴしか残ってなったが、彼女は固くなったパンを少しずつかじって飢えを癒した。 その後、ライはテーブルクロスで腐ったリンゴと古いセーター1着、そして母の形見となってしまった銀の櫛を大事に包んだ。 こっそり家を出て森に戻る途中見回りしていた町の人に見つかってしまった。 ライは精一杯森に向かって走り出した。 ライを見つけた住民は松明を持って、ライを追いながら魔女の娘が現れたと叫んだ。 静かな町に明かりがつけられ、人々の騒ぐ声がだんだん大きくなった。 ライをつかまえようとする人の数は増え、ライの脚からは力が抜け始めた。 地上に出ていた木の根に引っかかって転びながらライの意識が遠くなっていく。 後で目を覚めたら、自分は死んでいるか牢に入っているだろうと思いつつ。 その時、ライの耳に始めて聞く男の声が聞こえた。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |