第四章 隠された真実

第14話 1/2/3/4/5/6

タスカーの事が心配でなかなか眠れず、ベッドから起き上がってしまった。
心配だけではなく、直接タスカーを看護するほうが気楽になれそうだった。
暗殺者たちが戻ってくるかも知れないので、武装しようと考えたが、傭兵たちも多い街だから心配ご無用と言ったカエールの話もあったので、軽い服装に鞘が提げられているベルトだけを締めて自分の部屋から出た。

相変わらず宿の食堂は旅人たちの話で満ちていた。
女将のビッキーは彼らのお酒と料理の支度で大変だった。
エドウィンは宿をでて、タスカーが療養しているグスタフの家に向かった。
夜空にはエドネの目とも呼ばれる満月と星たちが輝いていた。

ふとアインホルンにいる家族たちを思い出す。
旅を始めてから一度も家族に手紙を送ったことがなかったので、他の人はともかく、母親は自分の事を心配しているはずだ。
父であるバルタソン男爵は厳しくて無口な人だった。
国王に忠誠を尽くすことを最高の美徳と思っていた父は自分の息子たちが国王を補佐する立派な人物になることを望んでいた。
そんな父の期待に応じるよう、エドウィンの兄であるジフリットは首都の大神殿の司祭になった。

デル・ラゴスで大神殿の司祭が持つ影響力はとても大きい。
国王の権力は絶対的であったものの、その権力をむやみに振り回せないよう阻止できる唯一の勢力はロハ教団である。
国王とロハ教団はお互い補完し合うようにデル・ラゴスを治めている。
ロハ教団の中心が首都の大神殿ということから、そこにいる司祭とは一国の宰相に相応する地位を持つ。
そこで、司祭になった者はその権力が乱用されることがないよう、家族から離れて、大神殿で全てを神に捧げながら一生を送るようになっている。

二十歳で司祭となって家を離れることになったジフリットは、自宅での最後の夜、八つ下の弟に聖騎士になるように言った。


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る