第四章 隠された真実
第3話 1/2 ‘聖騎士エドウィン?’ ライは自分の耳を疑った。 エドウィン? エドウィン・バルタソン? あの女は魔女だ、即刻処刑しろ! 私は真実を言っているだけです、あの子供達は… あなたのお父さんがうちの母さんを殺したんだ! 人々の叫び声、燃える炎、 空に広がる息ができないほどの煙、暗闇から差し延べられた暖かい手。 「ライ!危ない!!」 ディタの声が響き、刃に反射された日差しが目に入り、体が本能的に反応した。 「大丈夫か!」 耳を指すようなディタの声に、ライは自分が敵と対峙している状況に置かれていたことを思い出した。 そして自分の目の前に立っている聖騎士が自分の運命を変えた男爵の息子であることも。 そしてこれまで忘れていた心の奥の怒りが全身を震わせた。 ライはカタールを握り締め、聖騎士にかかった。彼女の攻撃は他の誰も途中で止めることができない。尖った金属のぶつかり合う音だけが森の中で響いた。 エドウィンにはライの殺気溢れる攻撃を全部防御するのが簡単ではなかった。 弱そうに見えるだけの女の体でこんな強力な攻撃ができるなんて、と驚くだけだった。 セリノンはハーフリングの近くにいる仲間にハーフリングの女とダークエルフを攻撃するよう信号を送った。 セリノンの唇の動きを読んだアサシンらはカタールを握ったままハーフリングの背中の方に近づいた。 そしてカタールを上げて、ハーフリング切ろうとしたとたん、風を横切る音が耳に響いた。 「…クゥーッ」 カタールを握っていたアサシンの背中に刺されている矢。それまで激しく動いていた皆の動きが止まった。 そこにいた皆の目が、矢が飛んできた方向を向いた。 そこには金髪や茶髪の真ん中ぐらいの色の髪を持つハーフエルフが大きな弓を引いてライ達を狙っていた。 生意気な瞳のハーフエルフだった。 「おい、もうやめてくれんか、俺の区域でこんなに大騒ぎしてたら、俺の立場が困ることになるんだ」 「何者だ!」 セリノンの表情は毒溢れる牙をみせている毒蛇みたいだった。 声からも殺気が十分感じられる。 「俺はピル傭兵団のカエールだ。死神ともよばれるんだよね。 まあとにかく今日はここまでにして、みんな仲良くそれぞれの家に帰ってくれないか」 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |