第四章 隠された真実
第6話 1/2/3 穏やかな水面の上で、マレアは目を閉じたまま微動だにしなかった。 動いているのは水面上に立ちのぼる水煙だけ。白い壁に囲まれた部屋は水で満たされていて、地面を隠している。 水面上に浮かんでいたマレアの体は徐々に水の中に沈んでゆく。 ゆっくりと目を覚ますと、透明な水を通じて見える青い空が視野に広がった。自分の体が沈んで生じる水の歪みによって、空も歪む。 一時期、主神オンがおられたあの空を見上げ、下位神たちはロハン大陸に聖なる祝福を与えてくださるように祈りをささげた。 しかし、今下位神たちは、ロハン大陸の全てを消そうとしている。全ての神の創造主であり、この世界の父なるオンを復活させるために。 主神の妻で世界の母であるエドネは、「ロハン大陸の創造物たちが繁殖し、その数が増えることによって無限であるように思われたオンの力が尽き、その体が消滅してしまった」と言った。 下位神たちは、主神自ら創造した巨大な生命体であるドラゴンから粛清することにした。それが神とドラゴンの戦争である。 ヒューマンのデル・ラゴスとエルフのヴィア・マレアの境界を守っていたレッドドラゴンを始め、次々と殺してきた。 最後のドラゴンであったブルードラゴン・アルメネスの、その巨大な体がバラン島に倒れるのをみて、激しかった争いは終わったかに見えた。 しかし主神は戻ってこなかった。 幾多の日々が経ち、下位神たちは沈黙のなかで恐ろしい決意をせざるを得なかった。 「ロハン大陸を創造の前に戻す」 最初、ロハがこの恐るべき提案を投げたとき、他の神たちは容易に賛成することができなかった。 しかし時間が経ち、自分たちの力もだんだん弱まっていることを感じて、彼らに残っている方法は1つしかないことを認めるしかなかった。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |