第四章 隠された真実

第8話 1/2/3

「偉大なるドラゴンの末裔ハエムが西の城門で待ってると言ってましたよ」

その言葉だけを残した赤い瞳の少女は、キッシュの答えは聞かなくてもいいというようにそのまま背を向け回って走り去る。
キッシュが言い終わる前に、少女の姿はすでに消えてしまった。
キッシュはそのまま少女が消えた方向を眺めて、西側の城門に向かう。
道に張られた青と緑の翡翠のタイルに視線を向けてゆっくりと歩いてから、一瞬少しずつ翡翠のタイルが黄色に染められていることに気づいた。
顔を上げると、太陽が徐々に海に沈み、大きく開けられた城門の向こうで水面と翡翠のタイルを黄金の色に染まっていくのが見える。
そして長く垂らした青髭の上で自分を見ている銀の瞳。

「偉大なるアルメネスの末裔よ、良くぞ参った」

「ある偉大なアルメネスの末裔に、貴公がキッシュを待っていると聞かれた」

キッシュはゆっくりとハエムに近づく。
自分の姿が映るその銀色の瞳で感じられるのは静寂だけだった。

「アティヤはハエムの侍従である。
いつもはハエムの隣に付いているが久しぶりに母親と会えるよう、暫くの間実家に戻させた」

「侍従になると家族との縁は切るようなっているのではないか?」

高官の政治家は時々幼い侍従を雇ったが、侍従の家族がその関係を利用して政治家の権力を乱用できないよう、侍従になった子供は家族との縁をきることが不文律になっていた。
何の返事もなく夕焼けを眺めていたハエムはため息を吐き、口を割る。

「偉大なるドラゴンの末裔アナンの妹御なのだ…」


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