第四章 隠された真実

第13話 1/2/3/4

リオナの話を聞いたディンは噛んでいたパイプに火をつける。

「その二人以外は大丈夫だったのか?」

「ヒューマンの聖騎士は疲れてはいるようだけど、大丈夫そうだったわ。
なんか戦いがあったようだけど、カエールのお陰ですぐ終わったみたいよ」

「ふむ…」

ディンの口から白い煙が流れ出て空中に散る。

「ではその人たちはどこで泊まることにしたのか?」

フロックスは何気ない風を装ってリオナに聞いた。

「タスカーおばさんとダークエルフさんはグスタフ爺さんちの2階の別々の部屋で介護されていて、ヒューマンの聖騎士さんはビッキーおばさんの宿で泊まることにしたって」

だとしたら時間が経つほど段々弱まっている力がダークエルフのもので、ずっと均等な力を発散しているのはヒューマンだな。
フロックスはこっそりと呟く。

どうして自分が作った創造物が主神オンの力を持っているのか信じがたかったが、目の前で屍のように横になっているフロイオンを見たフロックスは自分が思っていたものが本当に実在していることを認めるしかなかった。
フロックスは手を伸ばし、フロイオンの額に乗せた。
フロイオンの体の中に父親であるオンの力が微かに流れている。
フロイオンを見るまではフロックスは自分が主神オンの力を感じたのは、ただ彼らが持っている剣やスタッフに主神オンの欠片が埋め込まれているからだろうと思った。
フロイオンのベッドの隣に立てられているスタッフにはただ一つ宝石が埋め込まれていたが、それは普通のエメラルドだった。
フロックスはフロイオンの額に乗せた手をゆっくりと心臓のほうへ移す。
リオナから聞いた話どおりフロイオンの状態は深刻だった。
魔力が全然残っていない。
それにも関わらず永遠の眠りについたわけでもない。
一般的には魔力が尽きると永遠の眠りにつくが、フロイオンはただ体力が落ちて深い眠りについているだけだった。
だが精神的なショックを受け、自分の力で立ち上がろうとする意志をなくしたので、普通の人からは全快の望みが無いように見える状態だった。

自分が作った種族への愛情などもっていなかったフロックスではあったが、ふとフロイオンを治してあげようかと思った。
主神オンの力を持っているこの生命体が、今後どういう人生を歩んでいくかはわからなかったが、なぜかこのダークエルフの人生はただ単に終わるのではなく、なにかもっと大きいものが彼の前で待っているような気がした。
そしてその中に自分も含まれているのではないかと思った。

「俺がお前を治したと分かったら、きっとロハは俺を殺そうとするだろうな。
だが、お前と俺が会ったのは、お父様の意志のようだ」


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