第四章 隠された真実
第5話 1/2/3/4 指輪に刻まれた文字はジャイアントのものではなかった。 何だか見覚えがあると思って指輪を回転させてみたナトゥーは、アメジストが埋め込まれている部分の裏側に、ある紋様を見て思い出した。 それはフロックスを示す炎の紋様だった。満開に咲いた花の花びらのようなその炎は、ダークエルフを創造した火の神フロックスと王家の繁栄を意味する。 「ここを通したな・・・」 ナトゥーは独り呟きながら周りを見渡してみたが、他の痕跡は見当たらなかった。 指輪を拾ったところに戻り、跪いて地面を調べてみると、幾つかの足跡が交錯しているのが見えた。 その足跡を見て、ナトゥーは四人のハーフリングが車を牽くロバとともに、ここを通っていったのが分かった。足跡で相手の正体を見抜くのは、戦士訓練場で一番はじめに学ぶことだった。 ナトゥーがいた戦士訓練場の担当教官は、武器をうまく使うのも重要ではあるが、その前に相手に関してどれだけ知っているかが勝敗を分けるといつも強調していた。 「車には何か重いものが載せられていたようだな。しかし…この足跡はハーフリングじゃないな。 他の種族の足跡が2つもある。歩幅を見ると両方とも男だな。でもフロンのものではない。ダークエルフの使節団はシルクの靴を履いていたが、そんな靴ではこういう足跡は残らない。この足跡の主はとても体が軽く素早いやつだな。 エルフ?違う。エルフよりは少し重い感じがする・・・ ハーフエルフのものだな。そう、前に聞いた事がある。ハーフリング達がハーフエルフを傭兵として雇っているという話… 他の奴もハーフエルフなのか?でも靴がぜんぜん違うな。ハーフエルフ達は薄い鹿の皮で作った靴を履くが、コレはそれよりもっと硬い。 まるで薄く伸ばした金属のようだ。それにこの足取りは疲れているようだが、節制があって力が入っている。」 得体の知れない足跡を指先で探りながらナトゥーは考え込んだ。 湖から立ちのぼる水煙が風に乗って森に広がる。月光を浴びた水煙は薄い蒼色を浮かべながら地面を覆った。 自分の足元に触れる蒼い水煙を見るナトゥーの頭の中で思い浮かぶことがあった。節制と力のある足取りと荒い靴・・・ 「聖騎士だな」 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |