第四章 隠された真実
第1話 1/2/3 「あなた達は兄弟のような私達の同族を殺したんです。 マレアがそれを望んでるとも思ってるんですか。」 いくら祈ったって女神は応えないのに、あなた達の祈りなんか何の意味があるのか。 トリアンは心の中で彼らに聞いた。そしてその答えも分かっていた。 「そいつは泥棒だった。 自分の罪を償うのは当たり前じゃないか」 物を盗んだから殺した?トリアンは唖然とした。 トリアンの反応を気にもせず、リーダーだと思われる狂信者が自分の信念について熱く語り始めた。 「何故この大陸に溢れる悪の気運や混沌で我々が苦しんでいるのか分かるのか。 それは我々の罪が浄化されず、大陸を汚してしまったせいだ。 神々は我々が大陸を汚したことに怒り、モンスターや病気などで我々を罰しているのだ。 愚かな者よ。これが真実だ!」 「女王陛下や神官、どのお方もそんなことをおっしゃったことがないのに、あなた達は何を根拠に神が私達を罰しようとしていると思うんですか」 「ラウケ神団について知ってるか。 彼らはヒューマンの預言者、ヘルラックの預言書を基本に作られた宗教団体だ。 彼らは聖殿に書かれた預言を大陸の全種族に伝えるために全大陸を旅している。 そして我らは先月彼らに会い、真実を聞いた。 我らはこの大陸を救うために真実通りに行動しているだけだ」 ヒューマンの預言者ヘルラック?世の中がこうなることを知ってた人もいたのか。 もしかすると女王陛下や大神官様は何の意味もないことをなさっているのでは? 神についての真実を隠すことだけが最善の方法なのか。 トリアンは自分の心の奥から溢れる混乱を感じ、めまいがするほどだった。 ワンドを落としそうになってトリアンは気を取り戻した。 「エルフの歴史上最高の預言者だといわれるリマ・ドルシル大神官様もそんな預言はなさったことがありません。 そして歴史上のどの神官も同じです。 なのに名も知らないヒューマンの預言者の預言に騙されるなんて、エルフとして恥です。」 トリアンは叱るような言い方だった。 緑の目の信者は黙ってトリアンを見た。そして呟くような声で答えた。 「涙の洞窟…預言者デルピンを忘れたか」 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |