第四章 隠された真実

第10話 1/2/3/4/5/6

男の質問に何も答えず消えてゆくたき火を見つめていたライは、自分と一緒に行くかと聞く男の質問に顔を上げた。

「ロハン大陸の北にはバランという島がある。
そこには忘れ去ったヒューマンの子孫たちが住んでいるんだ。
一緒に行くか?」

ライは頷いた。

「そこで君を歓迎してくれる人は誰もいない。
俺は君をその島まで連れては行けるが、そこで生き残るためには君一人でやっていくしかない。
それでも行くか?」

ライは一所懸命頷いた。

「よし。今までの君はここで死を向かい、ダンとして生まれ変わるのだ。
そういえばまだ君の名もまだ聞いてないな。
名前は何だ」

「ライラック…」

リラの花がとても好きだった母が付けてくれた名前だった。
少し顔を歪めた男は席を立ちながら言い出した。

「それはあまりにもデル・ラゴス臭い。
これから君をライと呼ぼう。
古きロハン語で“現在”を意味する言葉だ」

パルタルカに着いた後、彼にはライより1つ上の息子がいて、その少年の名前が“ディタ”ということが分かった。
男が話した通り、ライを歓迎してくれる人は誰もいなかった。
誰もが彼女がデル・ラゴスから来たと聞いて、殺気が篭った目で彼女を見た。
ディタ、ただ一人を除いて…

幼いときに母をなくし、大陸に出るときが多かった父のため、ディタは一人で留守することに慣れていた。
しかし気後れしたり顔を曇らせたりする性格でなく、いつも活発で元気でいたので周りの人から好かれた。
自分の年より大人しかったので叱れたことはあまり無かったが、時々優しすぎると人から嫌味をいわれた。

その性格だからかディタは初めからライの面倒を見てくれた。
訓練場の寮に入る前までライはディタの家で住むことになり、ディタはライがまるで自分の妹であるように仲良くしてくれた。
ライが寮に入った後もディタはライを実の妹のよう扱ってくれた。
矢が首にめり込んで死ぬまでも…


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