第四章 隠された真実
第11話 1/2/3/4/5/6 「遅かれ早かれドラットから使者が来るとは思っていたが、まさか鎧兜の武人が来るとはね…」 カノス・リオナンはナトゥーの挨拶を皮肉するように答えた。 `俺も自分がこの地に使者として送られるとは想像もしなかった` ナトゥーは心中の愚痴が外に出ないよう口を固める。 「それはともかく… ドラットで命をなくしたダークエルフの使者たちに対し、レフ・トラバ殿はいかなるご決断を?」 「レフ・トラバ様はダークエルフの使者達に起こった予期せぬ惨事に深く遺憾な意を示し、失踪されたフロイオン・アルコン卿を捜すため、最善の努力を尽くされますとの事をお伝え致します」 「ジャイアント側ではフロイオン・アルコン卿が生きていると思っていますか?」 腹違いの弟の名前を口にしたカノス・リオナンの声には妙な感情が篭られていた。 まるで、生きていないことを祈っているような。 「わたくしはフロイオン・アルコン卿が生きていると確信しております」 ナトゥーの自信感溢れる答えにカノス・リオナンの右眉が少し引きあがる。 「何ゆえでそう思っておられる?」 ナトゥーは懐に入れておいたフロイオンの指輪を取り出した。 カノス・リオナンに指輪を渡そうと近づくと、石像のように微動もしなかった近衛たちがスタッフをナトゥーに向けて構える。 「陛下にお見せしたい物がございます」 接近できないよう威かす近衛のため、ナトゥーはそれ以上近づけないまま指輪を持ち上げる。 その時、急に後ろから女性の声が聞こえてきて、ナトゥーは驚いて指輪を落そうとした。 「わたくしにお渡しください」 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |