第四章 隠された真実
第13話 1/2/3/4 フロックスはフロイオンに囁くように言いながら、フロイオンの胸に手を乗せ、自分の魔力を少しずつ流した。 乾いた木に水を与えるように、フロックスの手から流れ出た魔力はフロイオンの心臓から体に広まる。 フロックスは自分の魔力を受け取ったフロイオンがすぐ治ると思ったが、予想もできなかったことが起きた。 なぜか少しずつ流した魔力ではフロイオンの魔力はちっとも満たさなかった。 フロックスはもっと魔力を送り出した。 だがやはりフロイオンの魔力は底をついたままだった。 ようやくフロックスはフロイオンの魔力が普通のダークエルフとは違って、無限に近いことが分かった。 それは多分主神オンの力が与えた影響であろう… フロックスは苦笑しながら、まるで同じ神に魔力を分けるように、フロイオンに自分の魔力を注入した。 普通のダークエルフならば、度を過ぎた魔力で狂ってしまうが、フロイオンの魔力はやっと少しずつ回復してゆく。 「主神と我らの差がこれほどだったとは…」 フロックスは再び父親であるオンの力と自分の力の差を実感した。 その時、主神オンの力が自分に近づくことを感じた。 ヒューマンの聖騎士が持っている主神オンの力は、聖騎士が眠りについたせいか動いていない。 自分に近づくのはそれとは別のものだった。 殺気が篭った、今まで感じた主神オンの力の中ではもっとも強いものだったが純粋なものではない。 闇の歪んだ力で増幅されている状態だった。 フロックスはフロイオンに魔力を分けてあげることを止め、魔法を使って急いで影の中に身を隠した。 キーッという音と共に扉が開けられたが、そこから何も入って来ない。 フロックスが呪文を呟くと微かに女の姿が見えてきた。 両手でカタールを握り、フロイオンに向けて歩いてくるその女は、ライだった。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |