第四章 隠された真実
第15話 1/2/3/4 しばらく口をつぐんで考えこんでいたハエムは、顔を上げキッシュに振り向きながら確信したような口調で話した。 「真に残念なことではあったが、我々が正しかったことが確信できてよかったと思っておる。 貴公を王位候補者として薦めたのは正解だったようだ。 幼馴染の偉大なるドラゴンの末裔ドビアンと競争し、勝ち取るということは厳しいとは思うが必ず勝利していただきたい。 偉大なるドラゴンの末裔ハエムも、貴公の勝利のため最善をつくす」 ハエムとキッシュは健闘を祈る握手を交わして別れた。 キッシュの頭の中は混乱していた。 しかし、何より自分の頭の中で大きくなってくるのはドレイクの姿だった。 同じ種族である自分からみても、あれはドラゴンではなくモンスターだった。 ふとグラット要塞で助けたヒューマンの聖騎士を思い出す。 彼の目にも自分がモンスターのように見えたのではなかったのだろうか。 `当然そうだったんだろうな・・・ エルフたちもキッシュをモンスターだと思って狩ろうとしたのだから…` 数十年前、自分がレブデカから離れ、世界を見回るという志を持ち、ロハン大陸に行って旅を始めたころを思い出す。 他の種族の前に絶対立たないよう長老から念を押されたので他の種族の首都には入れなかったが、遠くから色々な種族を見て最後にエルフを見るためヴェーナに向かって森を通過していたところだった。 暖かい気温とやわらかい春風で緊張が解かれていたのだろうか。 急に地面がくぼみ、深い穴に落ちた。 狩りの為作っておいた落とし穴に落ちてしまったのである。 キッシュは早く落とし穴から抜け出そうと立ち上がったが、落ちた時、右足が折れてしまった。 耐えられない痛みが全身を走ったが、このまま痛がっているわけにはいかない。 エルフたちに見つかる前に、ここから逃げることが先だった。 歯を喰いしばってやっと立ち上がったとき、落とし穴に近づくエルフたちの声が聞こえた。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |