第四章 隠された真実
第4話 1/2/3 「当時、デルピンの予言は皆に認められませんでした。実際その予言は呪いに近かったものだから・・・ 今まで数々の預言者が未来を読みましたが、デルピンの予言のように恐ろしい内容を含めていたものはありませんでした。それでも読んでみますか?」 「はい、陛下」 「貴方がお望みであるものは無いかも知れません。 闇に閉ざされた未来を描いているだけの予言によって、貴方の希望は無限の恐怖に変わるかも知れません。 そうなると貴方は生きる意欲を無くし、一生、大きな絶望だけを抱いたまま生きていくしか無いかも知れません」 「私の決意が揺れることは決してありません」 トリアンの答えにシルラ・マヨルは少し考え込んだ。そして、周りの侍女を下がらせてから目を閉ざし、深呼吸する。 彼女の体が光だしながら、足元に複雑な紋様の巨大魔法陣が描かれはじめた。まるで巨人が丹念に書いたような銀の文字が一つずつ光りながら描かれていく。 魔法陣が完成すると、シルラの体からいくつの光の玉が浮かび上がる。ぼやけて空中に浮かんでいた光の玉が、魔法陣の光が強くなるほど太い巻物に姿を変えていく。 シルラは目を開き、1つの巻物を指差した。リマとトリアンの目の前にシルラが選んだ巻物がゆっくりと開かれる。 「予言の記録は王宮の古文書館でなく、ヴィア・マレアの国王の体の中に保管されてきました。手で触れる物でなく霊体として存在する物だからこそ可能だったのです。 世の中でもっとも安全に保管できる方法だと言えるでしょう」 リマ・ドルシルの声が震える。 「しかし陛下・・・その方法は・・・」 「ええ、霊体を収めている肉体には相当な負担がかかります。 霊体を収めた瞬間から死ぬまで絶えなく自分の魔力を霊体に奪われますから。いつかは魔力が尽き果てることもあるでしょう」 トリアンはやっとリマ・ドルシルの声が震えた理由が分かった。 魔力とは魔法が司れる力ではあるが、同時に霊魂の一部でもある。魔力が尽き果てるということは、魔法が使えないということより、永遠の眠りに喰われることの意味が大きい。 「死ぬのではないですが、生きているとも言えない永遠の眠りにつくことになる可能性もありますので、こういう方法は確かに命に関わるくらいの危険性を伴います。 しかし、こうしてまで予言の記録を徹底的に保管すべき理由は、時には予言で未来を知ってしまうことで、一人の運命だけでなく全ての運命が変わる場合もあるからなのです」 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |