第四章 隠された真実

第5話 1/2/3/4

ナトゥーは自分の口から出る単語を聞いて強い拒否感を抱いた。

ロハン大陸でもっとも広い地域を占めた種族であるヒューマン。
そのせいなのか、ドラゴンが亡くなった後、ヒューマンの王国だというデル・ラゴスからドラットに派遣された使節団は高慢な顔をしていた。
その頃10歳のナトゥーは、幼い弟たちを連れ、久しぶりに家に帰ってくる父親を迎えに行っていた。

王宮前の広場には幾多のジャイアント達が何かを待っていた。ぼやっとしたナトゥーの目の前に現れたのは、はじめて見る種族と彼らを護衛していた父親だった。
ナトゥーたちの近くでその種族を見ていたジャイアント達は、その変な種族を「ヒューマン」と呼んだ。

ナトゥーは自分たちとまったく違う外見の見慣れない種族に我を忘れて見つめてから、青色と銀色の鎧を着ていたヒューマンと目が合った。ほんの少しの間の事だった、自慢と優越感溢れる彼の目つきがナトゥーを不快にさせた。
その夜、家に帰った父親は額に血管を立てながら、しかめた顔で自分が護衛したヒューマンの使節団の話をした。

「まったく生意気なやつらだ。自分らがまるでロハン大陸の主でもあるようにやっておる。
それでも我らは礼を尽くす意味で国境からエトンまで護衛してあげたのに、かえって国王陛下に、我らが自分たちを犯罪者扱いしたと不平を言うんだ!
国王陛下は笑いながら、それはジャイアントがヒューマンよりでっかいからそんな誤解をしたのかも知れないと仰っていたな。まったく無礼な輩だよ!それにそんな愚痴は序の口に過ぎなかったんだ。

彼らはドラゴンが亡くなった後、ロハン大陸でいろんな種族を訪ねてきたんだが、その中でジャイアントが最後だったそうだ。
まるで自分たちが我らのためにわざわざ来てくれたように言うのを聞くと、本当に開いた口が塞がらなかった。
それに、もっとも我慢できなかったのは、我らが望めば何の条件無しでヒューマンの文明を伝授してあげると言っておったわ!
その場にいた皆が、ヒューマンの使節団がどれだけ我らを見下しているのかが分かったんだ。わしを含めてそこにいたジャイアントの面々が一瞬に固まっちまったよ。
なんと、普通はポーカーフェースの近衛隊長ノイデさんさえも顔を歪めていた」

そういったヒューマンの使節団の傲慢不遜な言行は全てのジャイアントに知られ、ヒューマンに対する強い拒否感を生むことになった。

ジャイアントは自分たちの文明に高い誇りを持っていた。
荒い北の地で8人のジャイアントから始まって、今まで開拓してきたジャイアントの文明に対する侮辱は、彼ら先祖の汗や努力を笑い、精神を踏みにじることと同じものだった。
だからジャイアント達がヒューマンの使節団の提案に怒りを感じるのは当然だった。

ヒューマンがジャイアントの拒否と怒りに気づいたのか、それとも自分たちの進化した文明に野蛮なジャイアントの文明はあまり役立たないと見限ったのかは分からないが、それ以後ドラットを訪問したヒューマンは誰もいなかった。
後になってナトゥーは、自分と目が合ったヒューマンが聖騎士だったことが分かった。


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