第四章 隠された真実
第6話 1/2/3 「お前にやることがある」 ロハの言葉が頭の中で響く。 ロハは主神オンともっとも似ていて、心の声で他の人に話しかけることや他の人の心中を読み取ることも可能だった。 しかし、今はロハの力も他の神たちのように弱まり、相手の心までは読めなくなっていることを、マレアはなんとなく見当をつけることができた。 少しロハを見つめたマレアは水面まで浮かび上がる。 「聞いているわ」 「エルフたちの前に現れよ」 マレアの青い瞳が瞬かれる。 モンスターをロハン大陸に放してからは、長い間自分の種族の前に現れなかったので、急にこんな命令を下すのは驚きだった。 「一度だけでいいだろう。 エルフ達はヒューマンより神に対する未練が残っている。彼らの前に現れ、ヒューマンとエルフの混血であるハーフエルフを殺すよう命じるのだ」 やっとマレアはロハの考えが分かった。 モンスターと少数種族に命じて、ロハンの種族を攻撃するようにしたものの、彼らは予想よりしぶとく生き残った。 それに神たちは、やたらモンスターを創ることもできなかった。無理してモンスターを創造すれば、残っている力さえも尽き果ててしまうかも知れない。 それに前回、ロハの力に抵抗するヒューマンの聖騎士があった。 なぜヒューマンの聖騎士は他のヒューマンと違ってロハの力に従わなかったのか、誰もその理由は分からなかった。 ゲイルは神たちの力がさらに弱まったからではないかと言い、他の神たちをもっと焦らせた。 結局ロハは、ロハン大陸の滅亡に加速をつけるため、種族同士の対立を利用することにしたのである。 「分かったわ。そうします」 マレアの答えを聞いてもロハは帰らず、その場に立ったままマレアをじっと見つめる。 しばらく何の話も無くマレアを見つめていたロハは、口を割った。 「フロックスが我らを裏切るようだ」 また、マレアの目が瞬かれ、その青き瞳が揺らぐ。 「まさか…」 「フロックスがハーフリングの街で、ハーフリングたちと遊んでいるのをゲイルが目撃した。 それに…」 ロハはしばらく口を閉じる。 次に言葉を発した時には、彼の声には怒りがこもっていた。 「グラット要塞で俺の力に屈服しなかったヒューマンの聖騎士がその地にいた」 マレアの青き瞳がもっと激しく揺らぐ。 穏やかな波が強風に押されて立つように。 「フロックスがそんなはずないわ…」 「フロックスが我らを裏切ることを確認できたら、我が手で直にあやつめを始末する。 その時がきたら、俺を引き止めようとは考えるな。」 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |