第四章 隠された真実

第11話 1/2/3/4/5/6

ナトゥーが後ろを振り向いてみたら黒いシルクのドレスを着た美女が彼に手を伸ばす。
肩を覆う黒いウェーブをした髪の間から蝶のタトゥーが微かに見える。
自分の瞳と同じ色の大きなアクアマリンのスタッフを握った彼女はナトゥーから指輪を受取り、カノス・リオナンに向かってゆっくりと歩き出す。
彼女が国王に向かうと、近衛たちは道を開きもとの位置に戻った。

「先ほど探していたときには見えなかったのに、いきなり登場して余を驚かすのか、ジャドール」

ジャドールと呼ばれたダークエルフの美女は艶やかな微笑を浮かびながら、カノス・リオナンにナトゥーが持ってきた指輪を渡す。

「陛下、女性が美しいのは秘密を持つゆえですわ」

ジャドールの答えにカノス・リオナンは面白そうに大声で笑った。
ナトゥーが立っていることを忘れたように、ジャドールにいろいろと冗談を言った後ダークエルフの国王は、しばらく経ってからナトゥーが持ってきた指輪を見た。

「これはダークエルフの王家の指輪ではないか」

「さようでございます」

カノス・リオナンの反応にナトゥーは湧き上がる怒りをなんとか抑えながら答える。

「ハーフリングの地、西部の国境地域で見つけたものでございます」

「ハーフリング?」

カノス・リオナンは理解できないというように反問する。

「フロイオン・アルコン卿がハーフリングの地の西側の国境あたりまで暗殺者から避けて逃げたという情報を聞き、その地まで行きましたが発見できたのはその指輪だけでした。
だが、周りにフロイオン・アルコン卿の遺体も、血痕もまた見つけなかったゆえフロイオン・アルコン卿はまだ無事だと判断されます。」

「ではフロイオン・アルコン卿は今どちらにいらっしゃいますか?」

ジャドールと呼ばれた美女が国王の隣に立ったままナトゥーに質問を投げた。
ナトゥーは謁見中に割り込んできた彼女が、今は国王との会話に口を挟んでくることになりとても不愉快だった。
ナトゥーの顔が固くなることに気づいたカノス・リオナンはようやくナトゥーにジャドールを紹介した。

「ジャドールはイグニス第1宰相です。
わが国には10人の宰相がいて、国をうまく治めるよう国王を補佐しています。
その中で、第1宰相は国王のもっとも頼れる臣であり、国王代理の資格を持っています。
すなわち、ジャドールは我が右腕と同じゆえ、お気になさらず」

カノス・リオナンの紹介が終わると、ジャドールがそっとお辞儀する。

「お会いできて光栄ですわ、ジャイアントの戦士殿。
私、ジャドール・ラフドモンと申します。
お二方の会談中、無作法な振る舞いをどうかお許しくださいませ」


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