第四章 隠された真実
第13話 1/2/3/4 フロックスはライがフロイオンを殺すために来たのを一目で悟った。 彼はライからフロイオンを守るべきかどうか戸惑った。 今自分の姿を見せてしまったら、大騒ぎになって、もうここに泊まることはできなくなる。 いつの間にかライのカタールはフロイオンの心臓に飛び込もうとしていた。 もう悩む暇などない。 「止めろ!」 フロックスの叫びにライのカタールが空中で止まり、直ちにフロックスに向けられた。 「何者?」 フロックスは窓から照らされる月明かりの中へゆっくりと足を踏み出す。 「仕方ない」 ライの目に映るフロックスは普通のハーフリングの若者のようだった。 不必要な殺人はしたくなかったが、今は仕方ない。 最後のチャンスまで逃してしまったら、今まで準備してきた復讐は水泡に帰する。 ライはまずフロックスから殺してからフロイオンを始末することにした。 彼女は全ての力をカタールに乗せて大きく振り回した。 フロックスは後ろに避けながらフロイオンのスタッフを握った。 ライのカタールが再びフロイオンを襲い、フロイオンのスタッフとぶつかり、轟音を発した。 フロイオンのスタッフでなんとかライのカタールを防いだフロックスは今自分が最悪の状況に置かれていることに気づいた。 自分の魔力をフロイオンに分け与えたため、弱まっていた自分の力がさらに弱くなっているが、相手の女は歪んだ魔法の力で強くなっている。 下手をすると神である自分が下位創造物に命を奪われるかも知れない状態だった。 またライのカタールが月光に光りながらフロックスに襲い掛かる。 フロックスはスタッフでライの攻撃を防ぐことがやっとで、魔法を使う暇もなかった。 ライの絶えない攻撃でフロックスは徐々に部屋の隅に追い込まれる。 「ガチャーン!」 物が壊れる音がして、フロイオンのスタッフが真二つに折れた。 フロックスが慌てた隙を逃さず、ライはフロックスの肩にカタールを刺す。 「うああっ!」 フロックスは肩に刺されるカタールの刃を感じながら悲鳴を上げた。 ロハの剣に刺されてまだ治ってない傷口にまた攻撃を受けたからである。 フロックスの右肩にカタールを突き刺したライはもう一つのカタールをフロックスの首に向けた。 しかしライの手に伝わってきたのは人の肌を貫通した時のものではなかった。 フロックスのクビとライのカタールの間に厚い本が投げ出されてきて、ライのカタールはその本に刺されている状態だった。 「いったい何なの?!」 ライは本を投げて自分に叫んでいるのが昼間に会ったハーフリングの女であることが分かった。 タスカーまで現れた以上、皆を始末してからフロイオンを殺すことは不可能だった。 残された道は一つしかない。 フロイオンだけでも殺して逃げ出すことだった。 ライはフロックスの方に刺されていたカタールを引き抜きそのままフロイオンに襲い掛かった。 しかしフロイオンの心臓にカタールが刺されようとしたその瞬間、ライは自分の体から力が全部抜け出すのを感じながらそのまま床に倒れた。 ジャドールの魔法が解けたのである。 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |