第四章 隠された真実
第15話 1/2/3/4 「あれ? 何かかかったようだな」 「大人しいし、鹿でもかかったのかね?」 キッシュは壁に背を向け、どこか隠れる場所が無いか探したが、落とし穴にそんなところがあるはずがない。 冷や汗が体を濡らした。 いつの間にかエルフたちの影が落とし穴に写った。 キッシュはゆっくりと顔を上げ、落とし穴の入口を見上げた。 薄緑の瞳と目を合わせた瞬間、エルフの悲鳴が森の中に広がった。 「うあああっ! モンスターだ! モンスターがでたぞ!」 エルフたちはモンスターが出たと叫びながらどこかへ逃げ去った。 キッシュは全身の力が抜け、地面に座り込んだ。 自分を目撃したエルフたちが狩り人を連れてきて、このまま死ぬと思ったら目の前が真っ暗になった。 その時、やさしい女性の声が聞こえてきた。 「ねえ、大丈夫?」 キッシュは顔を上げ、声の持ち主を見上げた。 白い肌に薄青の瞳のエルフの女性が心配そうな顔で自分に話を掛けてきた。 さっきのエルフたちとは違って、自分がモンスターとは見えないようだ。 「どこか怪我したところはありませんか?」 「貴公は… キッシュがモンスターに見えぬのか?」 彼女は首をかしげながら答える。 「モンスターの目には殺気が満ちていますが、貴方はそうではないじゃないですか」 不思議そうな彼女の答えを聞いて、キッシュは心が温まるような気がした。 「偉大なるドラゴンの末裔キッシュだ。 貴公は?」 「私はリマ・ドルシルです」 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |