第四章 隠された真実
第5話 1/2/3/4 足跡の主が聖騎士だと分かると、ナトゥーは気分を害した。 ヒューマンの聖騎士とハーフエルフの傭兵、重たいものを乗せた車を牽くロバ、そしてフロンの指輪。 ナトゥーの頭の中には車に乗せられたフロンが浮かぶ。ダークエルフを襲い掛かった者がヒューマンの言葉で話した、と言った死んだ侍従の言葉が事実であれば、ヒューマンの聖騎士の足跡がハーフリングのものと一緒に残っている理由が分かる気がした。 ダークエルフとジャイアントの間に挟まれているハーフリング達にとっては両種族が同盟を結ぶことを大きな脅威だと思うのが当然だろう。 しかし、ハーフリングやハーフリングに雇われたハーフエルフが使節団を襲って自分たちの本性が露呈された場合には、状況はもっと厳しくなるはずだ。 だから彼らは一番近い友邦国であるデル・ラゴスに助けを求めたのではないか? 「…そして、やつらは何の遠慮も無く、ハーフリングの要請に応じたはず。 表ではハーフリングの国を保護するためだと言っておるんだろうけど、実はロハン大陸の主の座を脅かすかも知れぬ芽を、早く排除するつもりなんだろうな」 ナトゥーは腰を上げ、あちこちに残されている足跡を睨む。自分の推測が違うのかも知れない。しかしそれ以外、この足跡たちの説明ができなかった。 もうフロンの行方を調べることは、単にダークエルフとジャイアントだけのことではなくなった。 ハーフリングとハーフエルフ、その上ヒューマンまで関わることになってしまった。 ナトゥーは、もし自分の推測が正しいものであったとしても、自分が直接ハーフリングを訪ねてフロンを出せと言うのは、ジャイアントがダークエルフとハーフリング同士のことに口を挟んでいるように思われるかも知れない。 下手すると五つの種族が絡み合った争いが起こるかも知れなかった。 ここまで考えが及んだナトゥーは、まずイグニスへ行ってダークエルフの国王にダークエルフの使節団が襲われたのはジャイアント達とは関係無いことだということを明かし、この事件にハーフリングとヒューマンが関わっている可能性を伝えることが先決だと思った。 フロンが生きているかどうかも今の状態では分からないが、ナトゥーは彼が生きていると信じ、自分がイグニスに行ってダークエルフたちと共にここに戻り、彼を救出することがもっとも早い解決方法だと確信した。 だが、永遠の時間が過ぎた後も、ナトゥーがここに戻ることはできなかった。 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |