第四章 隠された真実
第11話 1/2/3/4/5/6 「陛下が人を送り、ハーフリングの街でフロイオン・アルコン卿を捜させるほうがもっとも安全だと思われます。 もし、ハーフリングが真に我々を威かすためフロイオン・アルコン卿を拉致したとしたら、そのときに宣戦布告しても遅くはないはず。 その時にはジャイアントからの支援も期待できるでしょう。 そうでありませんか?」 ジャドールの質問にナトゥーは少し悩んで率直に答えた。 「それは一介部隊の副隊長である私にはわかりません。 ジャイアントの国王であるレフ・トラバの命によりこの地に参りましたが、両国同士の秘密会同に関してはまったく存じておりません。 それにそういう重大なことは国王陛下が決められることであり、私はその命に従うだけです」 「ではフロイオン・アルコン卿が無事帰還するまで、ジャイアントの戦士殿はここでお待ち頂くようお願いいたします」 「何故私がここで留まる必要があるのでしょうか? ダークエルフの国王陛下にダークエルフの使者たちの事故は我々ジャイアントとか無関係であることをお伝えすることだけで、私の役目は果たせて頂きますが」 ジャドールがゆっくりと微笑む。 「しかし… 我々としてはまだ完全にジャイアント側を信頼するのは難しいことです。 私が存じている限りでは、ジャイアント側には我々との秘密会同に反対なさる方はそれほど少なくはないとのこと。 特に戦士会の方々がそうですと… だからこそジャイアントとの協約がまだ完全に取り纏まらない限り、慎重な行動を取らざるを得ません」 ナトゥーの怒りに篭った声が震える。 「我々ジャイアントを疑ってらっしゃると?」 「どうかご理解お願い致します」 「私は帰らせて頂きます!」 ナトゥーは怒りを抑えられずに言葉を発し、振り返ったが、すでに遅い事に気がついた。 彼の後ろからは十人くらいのダークエルフの近衛たちが、魔法の力が篭ったスタッフでナトゥーをけん制していた。 「使者を牢獄に入れよ!」 カノス・リオナンの命が下ると同時に、ナトゥーは目には見えないロープで縛られ近衛たちによって連れ去られた。 ナトゥーは大声で叫ぼうとしたが、声が出なくなってしまった。ジャドールがにっこりと笑う。 「我々は野蛮で騒がしいことがもっとも忌みますゆえ」 近衛に引かれたナトゥーが見えなくなると、カノス・リオナンの手のひらに置かれていたフロイオンの指輪が炎に包まれ、灰に変わる。 窓側まで歩いた彼は、灰になった指輪などには何の未練もないというように、外に投げてしまう。 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |