第五章 レクイエム

第4話 1/2/3/4

セリノンの説明を聞いたパルタルカの第7代君長、ベイエン・アスペラは口の中に含んでいたタバコの煙を空中にふかしながら頷いた。

「人々の犠牲はあったものの、幸い我らの計画通りになりましたね。
これからはロハン大陸にて戦争が起きるのを待つのみでしょう」

「はい」

「さて…
我らに使節団を殺せと依頼した、そのジャドールという女性はいったい誰でしたか?」

「ジャドール・ラフドモンはイグニスの第1宰相でした。
彼女が我らに使節団の暗殺を頼んだ時、現国王であるカノス・リオナンの王位を脅かす可能性があるフロイオン・アルコンを始末するのが目的だったらしいです」

しばらく目を閉じて考え込んでいた君長はキセルをくわえ、深く吸い込んで吐き出しながら話す。

「彼女がどんな人物なのかは判りませんが、実力で一国の第1宰相になったとしたら、彼女の話したことがすべてだとは言い切れませんね」

「どういう意味ですか…?」

「彼女が我らに述べたように、現国王の王位を脅かすかも知れぬ人物を排除することだけが、今回の目的ではないかも知れないということです。
もしかすると、彼女はもっと複雑な、政治的な計算で使節団の暗殺を計画したのかも知れません。
いまだにダークエルフとの協約を結ばず、時間を稼いでいるジャイアントに刺激を与え、交渉テーブルに座らせるためだった可能性もあります。
これから見守るべきことですが…」


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