第五章 レクイエム
第5話 1/2/3/4 自分がフロイオン・アルコンの殺人の濡れ衣を着せられる羽目になるというベロベロの話を聞いたナトゥーは体から力が全部抜けてしまったような気がした。 ベロベロは自分の説明のせいで切望に落ちてしまったナトゥーを慰めようとした。 「全部終わってしまったとは思うんじゃないぞ。 フロイオン・アルコンは庶子ではあるが、支持勢力も相当あるし、そんなに簡単に死ぬはずがない。 そうなるとその間はおぬしも無事だろうしな。 ここからいつ出られるのかは分からぬが、少なくともワシよりは早く出られるはずだ。 それに人生と言うのは予想できぬことだらけだから、奇跡というのも期待してみなよ」 ベロベロの話を聞いたナトゥーは彼の話も一理があるような気がした。 もしかするとジャイアントとダークエルフの協約が早く結ばれ、無事にここから出られるかも知れない。 ナトゥーは今から怯えるのはまだ早いと自分をたしなめながら、ベロベロがここに閉じ込められた理由を聞いた。 「ジャドールがワシの宝石細工が気に入らないと行って、国王が閉じ込めたね」 あてことも無い自分の事情を、ベロベロは他人事のように話す。 「ジャドール・ラフドモンをみたことがあるだろう? イグニスの第1宰相さ。 たぶん、おぬしがダークエルフの国王を謁見した時に隣にいたはずだが」 「ええ、相当美女でしたね」 「美しいとも… それも致命的にな。 国王は彼女にはまってもうメロメロだ。 事実上、イグニスの全てがジャドールの手の中で行われていると言っても言いすぎでは無いだろう。 たぶん、ダークエルフの使節団を利用してジャイアントにプレッシャーを掛けようと企んだのもジャドールのはずだ」 「イグニスが崩れるのも時間の問題ですね。 国王が情婦の掌の上で踊らされているとは…」 肩にある蝶のタトゥーとウェーブの黒い髪、アクアマリン色の瞳と艶やかな微笑みを浮かびながらナトゥーは軽蔑紛れの感想を話す。 だが、ベロベロの意見はナトゥーとは違った。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |