第五章 レクイエム

第1話 1/2/3

カイノンの体表であるゾナト・ロータスはセルフの話を聞いて段々表情が固まる。

「これで三回目だ。
亡くなった花嫁は、皆結婚式の途中で、腹部を貫かれていたんだ。
これは計画的に行われている事件なんだ」

興奮したセルフの声はどんどん高くなっていった。
ゾナト・ロータスは短くため息をして静かに話す。

「だが、新婦が魔法にやられたということだけでエルフの仕業だというのは、おかしくないか?」

「エルフ‘たち`の仕業なのよ」

アリエは部屋に入りながら言った。
アリエの手にはまだ乾いてない血痕が残っていた。
衝撃を受けた顔でゾナト・ロータスが椅子から飛び起きる。

「また新婦が…?」

「リーラがやられたわ。
街に戻って知ったことだけど、今日死んだ新婦はリーラだけじゃないわね」

「メイが死んだ。
今ヘーベットは正気じゃない」

アリエにハンカチを渡しながらセルフが答えた。
アリエは手に付いた血を拭いながらセルフの隣に座る。

「私はバンシーの呪いだと思ったわ。
でもベディールとリーラの結婚式を行ったところにはバンシーなどいなかった」

「疫病でもない!
死んだ花嫁たちは皆健康だった!
リーラも今朝会ったときには何の問題もなかったんだ!
これはあのエルフの仕業なんだよ!」

「しかし証拠がない」

証拠が無いというゾナト・ロータスの言葉にセルフが怒りの声を上げながら椅子から立ち上がる。

「お前はエルフの味方なのか?!」

アリエがセルフの腕を引き、椅子に座らせた。

「セルフ、落ち着いて、証拠がないと言っただけだわ。
エルフに肩入れしたわけじゃないのよ」

セルフは息巻きながらゾナト・ロータスを睨みつける。
ゾナトはセルフから目を逸らさず見つめながら、落ち着いた声で話した。


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