第五章 レクイエム

第2話 1/2/3/4

「なんですと?」

「おぬし、ジャイアントの使者として、秘密裏にダークエルフの国王に謁見するため来たのだろう?」

ナトゥーの背中を冷や汗が走る。
ジャイアントとダークエルフの秘密協約はまだ少数の人にしか知られていないことだった。
まだ両国の間で秘密協約が結ばれたわけではないため、一般の人々は知らないのが当然だった。
フロイオン・アルコンのエトン訪問の件も、多くのジャイアントたちが社交的な交流に過ぎないと思っているのに、どうしてハーフリングが秘密協約のことを知っているのだろうか。
ナトゥーは声が聞こえる方向に近づく。

「あなたは誰ですか?」

「ワシはベロベロ。リマ一の宝石細工職人だ。
おぬしは多分、一部隊の副隊長くらいだろうな」

「それをどうやって…」

「おぬしのベルトだ。
それはワシが作ったものだね」

ナトゥーは自分のベルトを見た。
黒いメノウと赤いルビーの細工で仕上げられたベルトの飾りが目に入る。

「これをあなたが作ったということなのですか?」

「相当昔の話だね。
ワシが結構若かった頃に頼まれて作ったものだから。
隊長のベルトは象牙とトルマリンで飾られているはず。
真ん中には大きなライノが刻まれている。
そうだろう?」

宝石細工職人というハーフリングの話は本当だった。
ナトゥーは息を呑んで、冷たい壁の向こうから聞こえる明快なハーフリングの話に耳を澄ませた。


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